@IDX:37700
@OFF:0xe2
@SPK:
@JPN:　これで約束の期間の半分を消化した。
@ENG:

@IDX:37701
@OFF:0x114
@SPK:
@JPN:　正直、キツイ仕事ではあった。
@ENG:

@IDX:37702
@OFF:0x140
@SPK:
@JPN:　何よりも、精神的な疲労が蓄積されてゆく。
@ENG:

@IDX:37703
@OFF:0x178
@SPK:
@JPN:　そんな仕事だった。
@ENG:

@IDX:37704
@OFF:0x1aa
@SPK:
@JPN:　あの笑い声……。
@ENG:

@IDX:37705
@OFF:0x1ca
@SPK:
@JPN:　あれは、追い詰められた僕の心が発した警告だった　のかもしれない。
@ENG:

@IDX:37706
@OFF:0x21a
@SPK:
@JPN:　だが、同時に、この仕事を自分がなぜ始めたのか、　改めて思い起こさせることでもあった。
@ENG:

@IDX:37707
@OFF:0x28c
@SPK:
@JPN:　父のような医者になりたい。
@ENG:

@IDX:37708
@OFF:0x2b6
@SPK:
@JPN:　原点の再確認。
@ENG:

@IDX:37709
@OFF:0x2d4
@SPK:
@JPN:　……この仕事はやり遂げようと思う。
@ENG:

@IDX:37710
@OFF:0x306
@SPK:
@JPN:　考え方を変えれば、仕事を続けることは自分なりの　一種の試金石なのかもしれない。
@ENG:

@IDX:37711
@OFF:0x364
@SPK:
@JPN:　困難に突き当たって、挫折するのか否か。
@ENG:

@IDX:37712
@OFF:0x39a
@SPK:
@JPN:　逃げ出して、夢を諦めるのか否か。
@ENG:

@IDX:37713
@OFF:0x3da
@SPK:
@JPN:　……仕事のことで思い悩むのはもうやめよう。
@ENG:

@IDX:37714
@OFF:0x414
@SPK:
@JPN:　外からは、蒸し暑い夏の熱を冷ます涼しげな虫の音　が聞こえている。
@ENG:

@IDX:37715
@OFF:0x464
@SPK:
@JPN:　夜気をもたらすその音色に聞き入りながら、明日へ　と続く眠りに意識を沈めていった……。
@ENG:

@IDX:37716
@OFF:0x5d7
@SPK:
@JPN:　残り、あと１週間前後……。
@ENG:

@IDX:37717
@OFF:0x601
@SPK:
@JPN:　今日まで乗り越えてきた日々と同じくらいの日数が　過ぎれば、死体洗いからおさらばできる。
@ENG:

@IDX:37718
@OFF:0x677
@SPK:
@JPN:　何とか作業は慣れてきた。
@ENG:

@IDX:37719
@OFF:0x69f
@SPK:
@JPN:　御堂さんともうまくやれている。
@ENG:

@IDX:37720
@OFF:0x6cd
@SPK:
@JPN:　最初の頃からは想像もできないほど、全てが順調に　いっている。
@ENG:

@IDX:37721
@OFF:0x729
@SPK:
@JPN:　問題はただ一つ……。
@ENG:

@IDX:37722
@OFF:0x74d
@SPK:
@JPN:　一昨日、昨日、今日と続いた、死体の異常。
@ENG:

@IDX:37723
@OFF:0x785
@SPK:
@JPN:　それさえなければ、残り１週間が２週間になっても　乗り越えられると思う。
@ENG:

@IDX:37724
@OFF:0x7e9
@SPK:
@JPN:　ただ目が開いていただけ……。
@ENG:

@IDX:37725
@OFF:0x815
@SPK:
@JPN:　炭化した皮膚はゴミ。落としても問題ない……。
@ENG:

@IDX:37726
@OFF:0x851
@SPK:
@JPN:　今日まで若い女性が多かったツケ……。
@ENG:

@IDX:37727
@OFF:0x885
@SPK:
@JPN:　……そんな言葉でなんとなく誤魔化されてきたが、　今思い返すと納得できない。
@ENG:

@IDX:37728
@OFF:0x8df
@SPK:
@JPN:　と言うよりも納得できるはずがない。
@ENG:

@IDX:37729
@OFF:0x921
@SPK:
@JPN:　ただ目が開いていただけならば、送る前に閉じれば　いいのではないか？
@ENG:

@IDX:37730
@OFF:0x973
@SPK:
@JPN:　あんな酷い火傷があっても問題ない？　献体される　のは自然死した遺体のはずではなかったのか？
@ENG:

@IDX:37731
@OFF:0x9dd
@SPK:
@JPN:　そして、今日の死体……。
@ENG:

@IDX:37732
@OFF:0xa15
@SPK:
@JPN:　何かが変わってしまったような気がする。
@ENG:

@IDX:37733
@OFF:0xa4b
@SPK:
@JPN:　明らかに不自然で、しかしどこがどうとは言えない　もどかしい感覚。
@ENG:

@IDX:37734
@OFF:0xa9b
@SPK:
@JPN:　……それでも、仕事は続けなくてはいけない。
@ENG:

@IDX:37735
@OFF:0xafa
@SPK:
@JPN:　残り、あと１週間……。
@ENG:

@IDX:37736
@OFF:0xb20
@SPK:
@JPN:　布団に横になりながら、今度は声に出して呟く。
@ENG:

@IDX:37737
@OFF:0xb5c
@SPK:
@JPN:　あと１週間だけ我慢すれば、こんな日々からは解放　される……。
@ENG:

@IDX:37738
@OFF:0xba8
@SPK:
@JPN:　その思考を最後に、顔を枕に埋めた……。
@ENG:

@IDX:37739
@OFF:0xc53
@SPK:
@JPN:　………………。
@ENG:

@IDX:37740
@OFF:0xc85
@SPK:
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:37741
@OFF:0xcb3
@SPK:
@JPN:　……。
@ENG:

@IDX:37742
@OFF:0xcf5
@SPK:
@JPN:　……ん、僕の部屋か？
@ENG:

@IDX:37743
@OFF:0xd27
@SPK:
@JPN:　やっぱり僕の部屋みたいだ。
@ENG:

@IDX:37744
@OFF:0xd51
@SPK:
@JPN:　こんな時間に誰だ？
@ENG:

@IDX:37745
@OFF:0xddc
@SPK:
@JPN:　のそのそと布団から這い出して、ドアの外の人物に　声をかける。
@ENG:

@IDX:37748
@OFF:0xe64
@SPK:[\protag]
@JPN:　どちら様でしょうか？
@ENG:

@IDX:37750
@OFF:0xebd
@SPK:［悠紀］
@JPN:　あの、……御堂です。
@ENG:

@IDX:37753
@OFF:0xf09
@SPK:[\protag]
@JPN:　え、御堂さん？　ちょっと待って、今開けるから。
@ENG:

@IDX:37754
@OFF:0xf6b
@SPK:
@JPN:　どうして御堂さんが僕の部屋に？
@ENG:

@IDX:37755
@OFF:0xf99
@SPK:
@JPN:　当然の疑問が浮かんだが、とりあえずドアを開ける　方が先だ。
@ENG:

@IDX:37756
@OFF:0xfe3
@SPK:
@JPN:　その答えは直接本人から聞けばいいのだから。
@ENG:

@IDX:37759
@OFF:0x1141
@SPK:[\protag]
@JPN:　どうしたんですか？　こんな時間に……。
@ENG:

@IDX:37761
@OFF:0x11ac
@SPK:［悠紀］
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:37764
@OFF:0x11ee
@SPK:[\protag]
@JPN:　……？　御堂さん？
@ENG:

@IDX:37766
@OFF:0x1245
@SPK:［悠紀］
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:37767
@OFF:0x1283
@SPK:
@JPN:　どうしたんだろう……？
@ENG:

@IDX:37768
@OFF:0x12a9
@SPK:
@JPN:　御堂さんの深夜の訪問にも戸惑ったが、それよりも　彼女の様子に、何か妙な胸騒ぎがする。
@ENG:

@IDX:37769
@OFF:0x130d
@SPK:
@JPN:　顔を俯かせ、押し黙ったまま玄関先で佇む彼女。
@ENG:

@IDX:37770
@OFF:0x1349
@SPK:
@JPN:　重苦しい沈黙が流れる……。
@ENG:

@IDX:37773
@OFF:0x13af
@SPK:[\protag]
@JPN:　あの……こんなところじゃなんですから、上がりませんか？　いま片づけますから……。
@ENG:

@IDX:37775
@OFF:0x1444
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……ごめんなさい。
@ENG:

@IDX:37778
@OFF:0x148e
@SPK:[\protag]
@JPN:　……は？
@ENG:

@IDX:37780
@OFF:0x14db
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……ごめんなさい。
@ENG:

@IDX:37783
@OFF:0x1525
@SPK:[\protag]
@JPN:　そんな急に謝られても……何かあったんですか？
@ENG:

@IDX:37785
@OFF:0x1596
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……実は、担当を降りることになってしまって……。
@ENG:

@IDX:37788
@OFF:0x15fe
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　担当を降りる？
@ENG:

@IDX:37790
@OFF:0x1657
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……ごめんなさい。
@ENG:

@IDX:37793
@OFF:0x16a1
@SPK:[\protag]
@JPN:　そんな……どうして……。
@ENG:

@IDX:37795
@OFF:0x16fe
@SPK:［悠紀］
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:37798
@OFF:0x1740
@SPK:[\protag]
@JPN:　……御堂さん？
@ENG:

@IDX:37800
@OFF:0x1793
@SPK:［悠紀］
@JPN:　私……ごめんなさい！！
@ENG:

@IDX:37803
@OFF:0x1840
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、待っ……！
@ENG:

@IDX:37804
@OFF:0x18db
@SPK:
@JPN:　行ってしまった……。
@ENG:

@IDX:37805
@OFF:0x18ff
@SPK:
@JPN:　……何だったんだ、今のは？
@ENG:

@IDX:37806
@OFF:0x1929
@SPK:
@JPN:　御堂さんが部屋に来た……。
@ENG:

@IDX:37807
@OFF:0x1953
@SPK:
@JPN:　部屋に来て……。
@ENG:

@IDX:37808
@OFF:0x1983
@SPK:
@JPN:　担当を辞める……？
@ENG:

@IDX:37809
@OFF:0x19a5
@SPK:
@JPN:　御堂さんが、担当を辞める……？
@ENG:

@IDX:37810
@OFF:0x19d3
@SPK:
@JPN:　御堂さんが担当を辞める……。
@ENG:

@IDX:37811
@OFF:0x19ff
@SPK:
@JPN:　御堂さんが……。
@ENG:

@IDX:37812
@OFF:0x1a2f
@SPK:
@JPN:　開け放たれたままの扉を前に、僕はしばらく呆然と　立ち尽くしていた。
@ENG:

@IDX:37813
@OFF:0x1a81
@SPK:
@JPN:　夏の夜の蒸した空気が流れ込み、我に返る。
@ENG:

@IDX:37814
@OFF:0x1ab9
@SPK:
@JPN:　何事もなかったかのように聞こえてくる虫の音の中　のろのろとドアを閉め、再び横になった。
@ENG:

@IDX:37815
@OFF:0x1b8a
@SPK:
@JPN:　御堂さんが辞める……。
@ENG:

@IDX:37816
@OFF:0x1bb0
@SPK:
@JPN:　御堂さんが……。
@ENG:

@IDX:37817
@OFF:0x1bd0
@SPK:
@JPN:　横になって無理やり目を閉じてからも、僕の思考は　そこで停止したままだった……。
@ENG:

@IDX:37818
@OFF:0x1ca2
@SPK:
@JPN:　うわっ！
@ENG:

@IDX:37819
@OFF:0x1cba
@SPK:
@JPN:　び、ビックリさせやがって……。
@ENG:

@IDX:37820
@OFF:0x1ce8
@SPK:
@JPN:　こんな時間に電話かけてくるなんて一体誰だ？
@ENG:

@IDX:37823
@OFF:0x1d70
@SPK:[\protag]
@JPN:　もしもし？　どちら様でしょうか？
@ENG:

@IDX:37825
@OFF:0x1dd5
@SPK:［千草］
@JPN:　こんな夜分にごめんなさい。私よ……起こしちゃったかしら？
@ENG:

@IDX:37828
@OFF:0x1e45
@SPK:[\protag]
@JPN:　何だ、副院長ですか。起きてましたが……。
@ENG:

@IDX:37830
@OFF:0x1eb4
@SPK:［女の声］
@JPN:　ンゥ……ぅぅぅ……。
@ENG:

@IDX:37833
@OFF:0x1f08
@SPK:[\protag]
@JPN:　……今の、何ですか？
@ENG:

@IDX:37835
@OFF:0x1f61
@SPK:［千草］
@JPN:　今のって……何か聞こえた？
@ENG:

@IDX:37838
@OFF:0x1fb3
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ。苦しそうな呻き声が……。
@ENG:

@IDX:37840
@OFF:0x2016
@SPK:［千草］
@JPN:　気のせいよ。混線してるのかしら？　嫌ねぇ……。
@ENG:

@IDX:37842
@OFF:0x2089
@SPK:［千草］
@JPN:　そうそう、そんなことより大事な話があるの。今から私の部屋に来れない？
@ENG:

@IDX:37845
@OFF:0x2105
@SPK:[\protag]
@JPN:　今すぐ……ですか？　構いませんが……。
@ENG:

@IDX:37847
@OFF:0x2170
@SPK:［千草］
@JPN:　じゃあお願い。詳しいことは、こっちで話すわ。
@ENG:

@IDX:37848
@OFF:0x21e6
@SPK:
@JPN:　一方的に言いたいことだけ言うと、副院長は電話を　切ってしまった。
@ENG:

@IDX:37849
@OFF:0x2236
@SPK:
@JPN:　受話器から聞こえるのは通話終了の発信音だけ。
@ENG:

@IDX:37850
@OFF:0x2272
@SPK:
@JPN:　もはや何を言っても、副院長の下には届かない。
@ENG:

@IDX:37851
@OFF:0x22ce
@SPK:
@JPN:　途中で聞こえた呻き声が、酷く不安を誘う。
@ENG:

@IDX:37852
@OFF:0x2306
@SPK:
@JPN:　どこかで聞き覚えのある声だった……。
@ENG:

@IDX:37853
@OFF:0x233a
@SPK:
@JPN:　それも、つい最近……。
@ENG:

@IDX:37854
@OFF:0x2370
@SPK:
@JPN:　……分からない。
@ENG:

@IDX:37855
@OFF:0x2390
@SPK:
@JPN:　喉まで出かかっているのに、どうしても言葉になら　ない。
@ENG:

@IDX:37856
@OFF:0x23d6
@SPK:
@JPN:　とりあえず、行ってみるしかないだろう。
@ENG:

@IDX:37857
@OFF:0x240c
@SPK:
@JPN:　……副院長の話とやらを聞きに。
@ENG:

@IDX:37860
@OFF:0x2524
@SPK:[\protag]
@JPN:　……遅くなりました。よろしいでしょうか？
@ENG:

@IDX:37862
@OFF:0x2591
@SPK:［千草］
@JPN:　ええ。早く入ってらっしゃい。
@ENG:

@IDX:37865
@OFF:0x25e5
@SPK:[\protag]
@JPN:　失礼します。
@ENG:

@IDX:37868
@OFF:0x2745
@SPK:[\protag]
@JPN:　……なっ！？
@ENG:

@IDX:37870
@OFF:0x2796
@SPK:［千草］
@JPN:　どうしたの？　そんな場所に突っ立ってないで、もっと近くに来たら？
@ENG:

@IDX:37872
@OFF:0x281b
@SPK:［悠紀］
@JPN:　んぅぅっ！　……んんんっ！
@ENG:

@IDX:37874
@OFF:0x287a
@SPK:［千草］
@JPN:　ほら。御堂さんも、もっと近くで見て欲しいって。
@ENG:

@IDX:37877
@OFF:0x28e0
@SPK:[\protag]
@JPN:　な、何ですか……これは……。
@ENG:

@IDX:37879
@OFF:0x2941
@SPK:［千草］
@JPN:　何って……見ての通りよ？
@ENG:

@IDX:37882
@OFF:0x2991
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうじゃなくて！
@ENG:

@IDX:37884
@OFF:0x29e6
@SPK:［千草］
@JPN:　フフフ……御堂さんね、あなたを事務局の仕事に戻してあげて欲しいって、わざわざ頼みに来たのよ？
@ENG:

@IDX:37886
@OFF:0x2a87
@SPK:［千草］
@JPN:　もちろん、そんなことできないわ。そう言ったらこの子、急に興奮しだして……これ以上私たちの仕事は手伝わないって言うものだから……。
@ENG:

@IDX:37888
@OFF:0x2b4c
@SPK:［悠紀］
@JPN:　んんっ、んんっ……んんぅ、んぅぅぅぅ！
@ENG:

@IDX:37890
@OFF:0x2bb7
@SPK:［千草］
@JPN:　だからお仕置きしてるの。単純な理由でしょう？
@ENG:

@IDX:37893
@OFF:0x2c1b
@SPK:[\protag]
@JPN:　そ、そんな、お仕置きって……。副院長……自分が何をしてるか分かって言ってるんですか！？
@ENG:

@IDX:37895
@OFF:0x2d93
@SPK:［千草］
@JPN:　ええ、分かってるわ。お仕置きよ。
@ENG:

@IDX:37898
@OFF:0x2deb
@SPK:[\protag]
@JPN:　な、何を言ってるんですか！？　こんなことが許されると思ってるんですか！？
@ENG:

@IDX:37900
@OFF:0x2e78
@SPK:［千草］
@JPN:　もちろん。だってこの子、私のことを脅したのよ？　あなたに秘密をバラすって言って……。
@ENG:

@IDX:37903
@OFF:0x2f04
@SPK:[\protag]
@JPN:　ひ、秘密？　一体、何を……。
@ENG:

@IDX:37904
@OFF:0x2f5a
@SPK:
@JPN:　何だ？　副院長は何を言っているんだ？
@ENG:

@IDX:37905
@OFF:0x2f8e
@SPK:
@JPN:　眼前で繰り広げられる狂態に呆然となっている僕に　副院長が近寄ってくる。
@ENG:

@IDX:37906
@OFF:0x2fe4
@SPK:
@JPN:　本能は逃げろと警告するのだが、四肢が凍りついた　ように動いてくれない。
@ENG:

@IDX:37907
@OFF:0x303a
@SPK:
@JPN:　幻惑されたように立ち尽くす僕の首に、副院長の腕　が回されていた。
@ENG:

@IDX:37909
@OFF:0x3179
@SPK:［千草］
@JPN:　そんな守秘義務も守れないような人間、看護婦失格でしょ？　だから、これからは私の玩具になるの……あなたと一緒にね。
@ENG:

@IDX:37912
@OFF:0x32da
@SPK:[\protag]
@JPN:　……えっ？
@ENG:

@IDX:37913
@OFF:0x3318
@SPK:
@JPN:　……副院長が言葉を終えた瞬間、首筋に軽い痛みが　走った。
@ENG:

@IDX:37914
@OFF:0x3360
@SPK:
@JPN:　直後激しい脱力感が全身に広がり、身体中の筋肉が　弛緩する。
@ENG:

@IDX:37916
@OFF:0x3454
@SPK:［千草］
@JPN:　……さあ、ぐっすりとお休みなさい……。
@ENG:

@IDX:37917
@OFF:0x34ba
@SPK:
@JPN:　副院長の囁く声が、子守唄のように遠くで聞こえて　いる。
@ENG:

@IDX:37918
@OFF:0x3500
@SPK:
@JPN:　なぜこんなことになった？
@ENG:

@IDX:37919
@OFF:0x3528
@SPK:
@JPN:　御堂さんが話そうとした秘密とは何だったのか？
@ENG:

@IDX:37920
@OFF:0x3564
@SPK:
@JPN:　なぜ副院長はこんな手段を取った……？
@ENG:

@IDX:37921
@OFF:0x3598
@SPK:
@JPN:　薄れゆく意識はそんなことを考えるが、その答えの　出ないまま落ちていった……。
@ENG:

@IDX:37922
@OFF:0x3765
@SPK:
@JPN:　残り、あと１週間前後……。
@ENG:

@IDX:37923
@OFF:0x378f
@SPK:
@JPN:　今日まで乗り越えてきた日々と同じくらいの日数が　過ぎれば、死体洗いからおさらばできる。
@ENG:

@IDX:37924
@OFF:0x3805
@SPK:
@JPN:　何とか作業は慣れてきた。
@ENG:

@IDX:37925
@OFF:0x382d
@SPK:
@JPN:　御堂さんともうまくやれている。
@ENG:

@IDX:37926
@OFF:0x385b
@SPK:
@JPN:　最初の頃からは想像もできないほど、全てが順調に　いっている。
@ENG:

@IDX:37927
@OFF:0x38b7
@SPK:
@JPN:　問題はただ一つ……。
@ENG:

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@OFF:0x38db
@SPK:
@JPN:　一昨日、昨日、今日と続いた、死体の異常。
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@SPK:
@JPN:　それさえなければ、残り１週間が２週間になっても　乗り越えられると思う。
@ENG:

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@JPN:　ただ目が開いていただけ……。
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@JPN:　炭化した皮膚はゴミ。落としても問題ない……。
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@JPN:　今日まで若い女性が多かったツケ……。
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@SPK:
@JPN:　……そんな言葉でなんとなく誤魔化されてきたが、　今思い返すと納得できない。
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@JPN:　と言うよりも納得できるはずがない。
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@JPN:　ただ目が開いていただけならば、送る前に閉じれば　いいのではないか？
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@JPN:　あんな酷い火傷があっても問題ない？　献体される　のは自然死した遺体のはずではなかったのか？
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@JPN:　そして、今日の死体……。
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@JPN:　何かが変わってしまったような気がする。
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@JPN:　明らかに不自然で、しかしどこがどうとは言えない　もどかしい感覚。
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@JPN:　……それでも、仕事は続けなくてはいけない。
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@JPN:　残り、あと１週間前後……。
@ENG:

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@JPN:　布団に横になりながら、今度は声に出して呟く。
@ENG:

@IDX:37943
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@SPK:
@JPN:　あと１週間だけ我慢すれば、こんな日々からは解放　される……。
@ENG:

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@OFF:0x3d25
@SPK:
@JPN:　その思考を最後に、顔を枕に埋めた……。
@ENG:

@IDX:37945
@OFF:0x3e54
@SPK:
@JPN:　これで約束の期間の半分を消化した。
@ENG:

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@SPK:
@JPN:　これを呆気ないと取るか長かったと取るか、考え方　次第だろう。
@ENG:

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@SPK:
@JPN:　少なくとも私生活の面は、有意義だったと思う。
@ENG:

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@SPK:
@JPN:　御堂さんと普通に話せるようになったこと……。
@ENG:

@IDX:37949
@OFF:0x3f6b
@SPK:
@JPN:　真魚とも、色々な意味で仲良くなれた……。
@ENG:

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@SPK:
@JPN:　御堂さんと普通に話せるようになったこと……。
@ENG:

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@OFF:0x4005
@SPK:
@JPN:　真魚という対等のつき合いができる相手を得られた　こと……。
@ENG:

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@JPN:　そして、副院長との関係……。
@ENG:

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@JPN:　中でも真魚との関係は、死体洗いが終わってからも　続くだろう。
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@JPN:　特に御堂さんと普通に話せるようになったことは、　これから仕事を続けていく上で大きなプラスになる　だろう。
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@JPN:　憧れの副院長と肌を合わせただけでも、死体洗いの　苦労が報われた気がする。
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@JPN:　だが、仕事そのもので見ればどうか？
@ENG:

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@JPN:　初めて死体を見てから、次の日も、その次の日も、　死体を洗い続ける日々……。
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@JPN:　一昨日、昨日、今日の死体……。
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@OFF:0x42b5
@SPK:
@JPN:　これでは、長かったと言わざるを得ない。
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@SPK:
@JPN:　あと１週間か……。
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@SPK:
@JPN:　死体から解放されるその日が、途方もなく先のこと　に思えて、気分が沈む。
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@JPN:　時計が進む音が、今夜に限って緩慢に感じる。
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@JPN:　チクタクチクタク……。
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@JPN:　耳から入りこんだ針の音が、チクチクと僕に攻撃を　仕掛けてきているように感じてしまう。
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@JPN:　このままじゃ眠れない。
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@SPK:
@JPN:　僕は副院長がくれた薬の力を借りて、無理やり眠り　の世界に逃げ込んでいった……。
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@JPN:　だがそれも、あと１週間ほどで終わる。
@ENG:

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@SPK:
@JPN:　布団に横たわり、平穏を祈るように、残る日々へと　思いを馳せる。
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@SPK:
@JPN:　その思考を最後に、顔を枕に埋めた……。
@ENG:

